お知らせ
HOME > 第20回GCPパスポート認定試験におけるシステムトラブルの発生経緯および原因究明と再発防止策について

2022年7月15日

第20回GCPパスポート認定試験におけるシステムトラブルの発生経緯および
原因究明と再発防止策について

日本臨床試験学会
代表理事 山口 拓洋

平素より学会活動にご尽力いただき誠にありがとうございます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染者数の増加を受け、日本臨床試験学会(「JSCTR」)は2020年12月12日に第20回JSCTR認定GCPパスポート試験(「本試験」)を初めてオンライン形式により実施しましたが、データを処理するサーバーにおいて、受験者433名中323名の回答データを処理できませんでした(「本システムトラブル」)。本システムトラブルにより、受験者に多大な迷惑をかけるとともに、学会員の皆様に大変ご迷惑とご心配をおかけしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。

本システムトラブル発生後、原因究明および再発防止に向けて、JSCTRとして真摯に対応してまいりました。第13期(2021年)事業報告書にも示させていただきましたが、理事会・運営委員会において、JSCTRとしての今後の方針を検討すると共に、ホームページにて学会員の皆様へのお詫びおよび本試験を延期して実施いたしました。

JSCTRでは、本システムトラブルについての調査委員会を設置し、技術的な検証や関係者へのヒアリング等を行い、事実関係を調査し、本システムトラブルが発生した原因を究明いたしました。また、並行して、法務専門家として弁護士にも参加いただいて専門的な助言を受けるとともに、外部の法律事務所に委託して本システムトラブルの原因の分析を行っていただきました。

以下、調査結果およびその報告を受けての本システムトラブルの発生経緯と原因および今後の対応について説明いたします。

原因分析の結果と評価

本試験に関する業務は、認定制度委員会が担当していますが、今回は初めて実施するオンライン形式であることから、そのシステムの開発および運用については外部のA社およびB社に委託し、JSCTRとA社との間の合意事項をA社がB社へ説明する方法で行っていました。

A社およびB社の担当者からのヒアリングによれば、本システムトラブルの原因は、①オンライン形式のシステムの仕様が説明と異なり制限時間経過後に受験者全員分の回答が同時提出となること、および、②サーバーの処理能力が低かったこと(想定外の通信負荷によるサーバータイムアウト)により、集中して送信された回答データを用意されたサーバーで処理できなかったことが原因であることが分かりました。

本試験のシステムが完成した際にJSCTRおよびA社は、制限時間が終了した時点で未提出の回答が全て一度に送信される仕様となっていることを認識しておらず、また、一度に送信されるため、用意されたサーバー処理能力を超えていた事を把握できておりませんでした。

調査の結果付随して発見された事実

上述の通り、直接的な原因は、開発されたシステムが今回のオンライン試験に必要な要件を満たさなかったことではあるものの、調査の結果、別の問題点も浮き彫りになりました。それは、要件定義・発注からシステム開発そして納品を限られた期間内に行わざるをえなかったこと、また必ずしもシステム開発に明るくない担当者がJSCTRおよびA社において選任された結果、関係者間のコミュニケーションが十分に図られなかったことでした。

再発防止策、改善策およびJSCTRとしての対応

以下に、調査委員会および外部法律事務所から指摘された点および提案された改善策をまとめました。JSCTRではこれらの指摘事項や提案を真摯に受け止め、理事会および各委員会において具体的な対応策を定め、2022年度中に実行いたします。

指摘された点 提案された改善策 JSCTRの対応策
JSCTRの承認プロセス、各組織における業務範囲、責任が不明確である 運営委員会が他の委員会より上位に位置するのであれば、委員会規則を改正し、実態に合わせた規定とする。各組織の業務範囲を明確にし、各組織だけで決定できる内容、承認が必要な内容、委員の任命等に関し、基準を定めて明確化する 学会のガバナンス強化として、学会の組織体制(理事会、運営委員会、各種委員会・部会、事務局等)を再度見直すとともに、指揮系統と責任の明確化、必要な文書の作成等を検討する
認定制度委員会の議事録等が保存されていない 各委員会等を開催した場合、議事録作成担当者を定めて、議事録を保存する 各委員会等が会議を開催した場合には、議事録の作成等を必須とし、JSCTRとしての保管場所を明確にする
一部の者へ作業が偏在している 各組織内で作業を分担し、各委員で負担を平準化させる 各種活動において、特定の学会員に業務が偏らないよう、上述のガバナンス体制を強化する
システム導入に関する手順、体制が整っていない ベストシナリオに沿ったシステム導入を行うための標準業務手順書を整備すべきである。早い段階から適切にプロジェクトを進められるよう準備する必要がある システム導入、業務の外部委託等に関する手順書を整備するとともに、事業計画に基づき各種プロジェクトが円滑に進められるよう体制を整備する
特定の知見を持つ担当者が不足している 当該分野の重要性とリスクに応じて、担当者の常設またはアドバイザーの採用を行う。必要なリテラシーを持った適切な担当者をアサインすることが重要である 必要に応じて、各種専門家を積極的に採用する。具体的には、既に協力していただいている法務専門家に加えて、システム専門家等について検討する
認定制度委員会のメンバーの本試験に対する関与、委託先の本試験に対する関与の在り方が明確ではなかった 試験の公正性や試験問題の漏洩リスク等を勘案し、認定制度委員会メンバーおよび発注先への機密保持の手立てを講じる必要がある 秘密情報の管理に関しての体制のあり方について検討するとともに、必要な文書の作成を行う

また、JSCTR認定パスポート試験は、学会員のみならず、臨床研究・治験における研究者・研究支援者にとって重要な認定試験だと認識しておりますので、コロナ禍の状況を見つつではあるものの、万全を期して基本的にはオンライン形式ではなく従来の紙媒体による試験形式として行う予定です。

日本臨床試験学会では、今後とも国内の臨床研究の質の向上および合理化・効率化につながる活動に努めてまいります。引き続き皆々様のご支援を賜ります様よろしくお願い申し上げます。

以上

このページの先頭へ